2023-10-01

オフィスでインフルエンザのワクチンを接種する。いい会社なので自己負担なしで接種してもらえる。あたりまえじゃないよほんとに、ありがたいよ。不活化されたインフルエンザのウイルスが左腕にいる。

そのまま昼休みも兼ねて、お気に入りの立ち食いそばへ歩く。アスファルトに塗られた白線が消えかかっている。車や人の通りの多さが横断歩道の劣化として記録されている。世界の実感は、かすかな痕跡の集合だ。ウイルスは、誰かからやってきて、また誰かへ渡り歩く。そうやって通過されただけの、ネットワークのひとつになるような感覚。僕の身体に残された抗体は、果てしない新型コロナウイルスの旅を記録している。歩行者信号が変わるまでのすこしのあいだ、そんな世界を想像していた。